クレジットカードにおける「トークン決済」は、セキュリティと利便性の両立が可能なため、ECサイトやモバイル決済をはじめとする幅広い分野で導入が進んでいます。これからECサイトを立ち上げようと考えている方の中にも、このトークン方式を検討している方が多いのではないでしょうか。
「トークン方式を採用するメリットとデメリットって?」
「トークン方式とリンク方式は具体的に何が違うの?」
「トークン決済を導入する具体的な手順は?」
この記事では、上記の疑問を抱えている方に向けて、クレジットカードのトークン決済の基本的な知識をわかりやすく解説していきます。非保持化やPCI DSSなど、やや専門的な部分についても詳しくご紹介しますので、ECサイトの決済方法にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
トークン決済とは?カード番号を使わない安全な仕組み
クレジットカードのトークン決済とは、カード情報を安全に取り扱うための仕組みです。利用者が入力したクレジットカード番号などの個人情報を、「トークン」と呼ばれるランダムな文字列の情報に変換し、決済処理をおこないます。
まずは、トークン決済におけるメリット・デメリットなどの特徴についてみていきましょう。
トークン方式のメリットとデメリットを紹介
以下は、トークン決済のメリット・デメリットを比較したものです。
メリット | デメリット |
---|---|
情報漏えいリスクの軽減 セキュリティ品質の向上 法令・ガイドライン遵守(非保持化の実現) 顧客の離脱防止 導入しやすい | システム導入・運用コスト 技術的な知識が必要(開発リソース) 環境への依存性 利用できるカードブランドや決済方法の制限 |
トークン決済には、高いセキュリティと導入しやすさというメリットがあります。しかし、一部環境への対応や運用コストなどのデメリットも存在するため、しっかりと理解した上で検討することが求められます。
それぞれ順に解説いたします。
トークン方式のメリット
トークン決済方式には、主に以下のメリットがあります。
- 情報漏えいリスクの軽減
- セキュリティ品質の向上
- 法令・ガイドライン遵守(非保持化実現)
- 購入者の離脱防止
- 導入しやすい
トークン決済方式の最大のメリットは、クレジットカード番号そのものを保持・送信しないことから、情報漏えいのリスクを大幅に下げられる点です。仮にトークンが不正に取得されたとしても、利用できる範囲や時間が限定されるため、悪用されにくい仕組みになっています。
その結果、事業者側は顧客のカード情報を直接管理する必要がなく、PCI DSSなどの厳格なセキュリティ基準への対応負担も軽減できるのです。PCI DSSとは、国際的に定められたクレジットカード情報の安全基準のことで、加盟店はその基準に細かく対応する義務があります。
また、トークン方式は、ユーザーにとっての安全性だけでなく、利便性も向上してくれる点が魅力です。ワンクリックのスムーズな決済や、サブスクリプションの継続課金なども実現できます。一部のカードブランドや決済代行会社では「アカウントアップデータ」機能により、有効期限切れや再発行時でも自動的に新しい情報に更新されるケースがあります。
さらに、トークン方式はカード情報を扱わないことから、自社で複雑なセキュリティ対策を構築せずに導入可能です。決済代行会社の仕組みを使えば、ECサイトやアプリにも簡単に組み込めるでしょう。
トークン方式のデメリット
トークン決済方式は高いセキュリティを実現できる一方で、いくつかのデメリットも存在します。
- システム導入・運用コスト
- 技術的な知識が必要(開発リソース)
- 環境への依存性
- 利用できるカードブランドや決済方法の制限
主なデメリットは、導入コストやシステムへの依存性、運用負担の側面などです。
まず導入時には、決済代行会社との契約やシステム改修が必要となり、初期コストや開発工数も発生します。導入や運用には一定の技術的知識が求められ、システム開発・保守にリソースを割く必要がある点もデメリットです。
また、既存システムとの連携が難しい場合や、利用できるカードブランド・決済手段が限定されるケースも少なくありません。トークン方式は、決済代行会社やインターネット環境に依存しているので、サービス停止・通信障害などがあると利用に影響が出てしまうでしょう。
さらに、一部の決済代行会社が独自方式を採用している場合、他システムへの移行が複雑になるケースもあります。ただし、国際ブランドが推進する「ネットワークトークン(ブランドトークン)」の導入により、標準化は進みつつあります。
トークン方式を採用することで、従来よりもセキュリティ品質は向上しますが、管理責任は依然として事業者側にあります。もちろん、不適切な運用をすれば不正利用のリスクはゼロではありません。
ECサイトで必要となるトークン決済の役割とリンク方式との違い
ECサイト上でのトークン決済は、セキュリティと利便性を両立させる重要な役割を担っています。通常、クレジットカード番号をそのまま保存・送信すると情報漏えいリスクが高まりますが、トークン方式はカード番号を一時的な代替データに置き換えるため、不正利用されにくくなるのです。
トークン方式とリンク方式における、決済方法の違いについては以下をご覧ください。
トークン方式 | リンク方式 | |
---|---|---|
決済画面 | 自社ECサイト内 | 決済代行会社の外部決済ページ |
カスタマイズ性 | 自由度が高い (自社デザインの反映可) | 制限あり |
顧客体験 | サイト遷移なしでスムーズに完結 | 外部ページでの入力による違和感・ラグが出やすい |
カード情報の非保持化対応 | 〇 | 〇 |
導入・開発コスト | 比較的高い (システム改修必要な場合あり) | 比較的低い (決済ページを作る必要なし) |
トークン方式とリンク方式は、どちらもカード情報の非保持化が実現できる接続方式です。
トークン方式は、決済画面が自社サイト内で完結するので、デザインやUI/UXの統一性が保たれ、購入者の離脱防止にもつながります。ただし、導入時の開発工数がかかる可能性もある点に注意が必要です。
一方リンク方式では、決済処理時に外部の決済代行会社のページに遷移して、クレジットカード情報を入力します。事業者がカード情報を保持しなくていい点がメリットですが、ページ遷移による顧客の違和感や離脱の可能性は否めません。デザイン統一の難しさはあるものの、簡単に導入できるのが魅力です。
そのため、トークン決済は高いセキュリティとUI一貫性が最大の利点であり、リンク方式は簡便さと低コストが強みだといえます。事業者のニーズを満たす接続方式を選択することが大切です。
トークン決済と非保持化やPCI DSSの関わりを解説
ここからは、トークン決済の導入を検討している事業者の方に向けて、非保持化やPCI DSSとの関わりについてより詳しく解説していきます。
それぞれ順に解説いたします。
トークン決済によって可能になるカード情報非保持化
トークン決済では、カード情報の「非保持化」が実現できます。カード情報の非保持化とは、事業者が顧客のクレジットカード情報を、自社のサーバーやシステムに保存・処理しない仕組みのことです。これにより、情報漏えいリスクを大幅に減らし、セキュリティ事故発生時のダメージも最小限に抑えられます。
日本では、2018年に施行された「改正割賦販売法」により、カード情報を取り扱う加盟店は「非保持化」または「PCI DSS準拠」のいずれかの対応が求められるようになりました。トークン方式を導入することで、この非保持化要件を満たし、安心してカード決済を提供できる体制を整えられます。
非保持化の具体的な仕組みは、以下の通りです。
- ユーザーが決済画面でカード情報を入力する
- JavaScriptなどを使って直接決済代行会社へ情報を送信する
- 事業者のシステムにはランダムな文字列(トークン)が返送される
- トークンを使って決済処理をおこなう
- 事業者はこのトークンのみを保持する(カード情報を扱わない)
トークン決済ならPCI DSS準拠が容易になる
改正割賦販売法のガイドラインでは、カード番号を保持する場合はPCI DSS準拠が必要とされています。「PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)」とは、クレジットカード情報を安全に取り扱うために、国際的なカードブランドが策定したセキュリティ基準です。
PCI DSSは、以下の国定的なクレジットカードブランド5社が共同で策定しています。
- Visa(ビザ)
- Mastercard(マスターカード)
- American Express(アメリカンエクスプレス)
- Discover(ディスカバー)
- JCB(ジェーシービー)
加盟店や決済事業者がこれらのブランドのクレジットカードを扱う場合は、PCI DSSの基準に従って安全に取り扱う必要があるのです。以下は、PCI DSSで定められている基準の一例になります。
- カード情報の暗号化
- アクセス制御
- 保管や送信の管理
- 定期的なセキュリティ評価 など
通常、PCI DSSに準拠するためにはシステム構築や運用コストが高くなり、専門知識も必要とされます。しかし、トークン決済方式を導入すれば、暗号化や保管・アクセス制御の負担が大幅に軽減できるのです。PCI DSSへの準拠が容易になり、比較的少ないコストとリソースで安全な決済環境を構築できるといえます。
トークン決済は国際ブランドも導入を進めている
トークン決済は、国際的なカードブランドも積極的に導入を推進しています。国際ブランド自体が「ブランドトークン」を発行することで、加盟店や決済代行業者の負担を軽減し、カード番号を保持しない仕組み作りをサポートすることが可能です。
クレジットカード番号の盗用による不正利用被害は増加傾向にあり、カード情報の安全な管理が急務となっています。さらに、先述した改正割賦販売法により、カード情報の非保持化が義務化されたという背景もあるでしょう。
トークンは店舗・決済代行に異なるという特徴があります。そのため、万が一流出したとしても一か所でしか悪用できない仕組みとなり、不正利用リスクを減らせるのです。トークン導入により、決済エコシステム全体の安全性が向上し、カード会員・加盟店・カード会社すべての信頼性向上が実現できます。
トークン決済の導入によりブランド価値の向上も図れることから、積極的な導入が進められているのです。
トークン決済を導入するための方法
ここからは、トークン決済を導入する方法についてみていきましょう。トークン決済は決済代行サービスを利用して導入するのが一般的です。導入時の具体的なステップや、エラー発生時の注意点と解決法についても解説しますので、トークン決済の導入・運用を検討している方はぜひご参考ください。
それぞれ順に解説いたします。
決済代行サービスを利用してトークン決済を導入する
ECサイトでトークン決済を導入する場合は、決済代行サービスを通して利用するのが一般的です。決済代行会社を通すことで、カード情報を直接保持せず、ユーザーが安全に決済できる仕組みを簡単に導入できます。
トークン決済のデメリットである複雑なセキュリティ対策や、PCI DSS準拠への対応も決済代行会社がサポートしてくれるため、運用コストや負担も大幅に削減できるでしょう。さらに、主要なカードブランドや各種決済手段への対応も事前に準備されています。
そのため、決済代行会社を通じて導入すれば、安全性と利便性を兼ね備えた決済環境が楽々構築できるのです。
ECサイトがトークン決済を導入するための具体的なステップ
ECサイトがトークン決済を導入する具体的なステップは、以下の通りです。
- 決済代行サービスを選定して契約する
- サイトに決済代行のスクリプトを組み込む
- テスト環境で決済が正常に動作するか確認する
- 本番環境で運用を開始し運用体制を整える
それぞれ簡単にみていきましょう。
まず決済代行会社を選定する必要があります。サービス選ぶ際は、以下の内容をしっかり比較・検討することが大切です。
- 対応可能なカードブランド
- 手数料体系
- サブスクリプション
- ワンクリック決済の対応可否
- サポート体制など
適切な決済代行サービスを選ぶことで、セキュリティ向上や運用負担軽減が期待でき、ECサイト運営者は安全かつスムーズに決済環境を構築できます。決済代行会社と契約後は、加盟店IDやAPIキーなどの決済に必要な情報が発行される形です。
決済代行会社とサービス契約後は、提供されるスクリプトやAPIをECサイトへと組み込みます。これにより、サイト側には直接カード情報が保持されない、トークン化されたデータ決済が実現される形です。
CMSやECプラットフォーム向けのプラグインを使えば、プログラミングの知識が少なくても導入できるでしょう。ただし、組み込み時はSSL対応やエラー処理、決済フローのユーザー体験を意識して設定することが重要です。
導入後は、実際の運用に入る前に、テスト環境にて決済が正しく動作するかを確認してください。決済代行会社などが提供するサンドボックス環境などを活用し、カード番号の入力・トークン生成・承認処理の流れを検証しましょう。
ここでエラーを洗い出して修正しておくことにより、本番運用時におけるトラブル発生を防げます。複数のカードブランドや決済パターンでのテストもおこない、あらゆるケースに対応できるよう準備しておけると安心です。
テスト環境での検証が完了したら、本番環境で決済運用を開始します。初期設定やトークンの管理体制を整え、定期的な決済状況の確認や、障害対応フローを構築しておくことが大切です。
また、顧客対応やサブスクリプション更新時のトークン管理、セキュリティログの確認なども運用ルールに組み込みましょう。これにより、安全かつスムーズにトークン決済を提供でき、ECサイトの信頼性向上が期待できます。
トークン決済で起こりやすいエラーと解決方法
トークン決済ではいくつかのエラーが発生しやすく、原因に応じた対応が必要です。
トークン決済で起こりやすいエラー | 解決方法 |
---|---|
トークンの有効期限切れ | 定期的にトークン更新をおこなう仕組み作り 決済代行会社の自動更新機能の利用など |
トークンとカード情報の不一致 | 決済代行のAPIや管理画面で情報の照合をおこない、必要に応じて再登録を促す |
ネットワーク・サーバー障害 | 障害発生時のリトライ処理やエラーメッセージを実装(再試行を促す) |
カードブランド非対応 | 通常決済に切り替える仕組み作り |
まず、定期課金やサブスクリプションで使用するトークンには、有効期限があります。期限切れによる決済失敗が起こりやすいため、定期的なトークン更新や決済代行の自動更新機能を活用することが大切です。
また、顧客がカードを更新した、あるいは誤ったカードでトークンを生成した場合は、トークンとカード情報の不一致が起こります。その際は情報の照合をおこなうため、必要に応じて再登録を促さなければなりません。
さらに、決済代行のサーバーや自社サイトの通信環境の問題で、トークンが正しく処理できないケースもあります。そのため、障害発生時のリトライ処理やエラーメッセージ表示を実装し、ユーザーに再試行を案内することも求められるでしょう。
一部カードブランド・海外発行カードが、トークン決済に対応していないというケースもあります。対応ブランドを事前に確認し、非対応の場合は通常決済に切り替える仕組みも用意することが大切です。
クレジットカードのトークン決済でお困りならネクストハンズ

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